エフエーティーエフエーティー

今、改めて知りたい。
<FAT>の本質。

数ある東京ストリートブランドの中で、特別な存在感を放つ<FAT>。ただの、スケートボードをコンセプトにしたストリートブランドだと思っていたら大間違い。ものづくりのこだわりも思想も、もっと深いところに本質があります。その魅力の正体はなんなのか!?ディレクターの駒井さんに話を聞きにいきました。 Photographer:Kenta Matsubayashi
Interview & Text:MANUSKRIPT

―ブランドがスタートしたのはいつでしょうか?

2002年です。前任のディレクターが創立者で、僕は2代目。スケートボードやBMX、ヒップホップ、そして古着といったカルチャーをミックスしたブランドとして誕生しました。

―スタート当初から、現在のようにオリジナルウエアを展開していたのでしょうか?

いえ、最初はTシャツとデニムだけでスタートしたんです。アメリカの古着に見られるTシャツやジーンズをモチーフにしつつ、そこに自分たちのカルチャーや美学みたいなものを入れ込んで。Tシャツは13ozのものを当時から作っていたし、ジーンズは大胆なくらいワイドシルエットだった。

―まさにスケーターカルチャーをミックスしている感じですね。

そうですね。

―<FAT>といえば、裏原にあるショップが象徴的です。

ブランド発足当初から、ずっと変わらずここにあります。最初は今の半分くらいのスペースで、すごく小さなお店にTシャツとジーンズだけを並べて。翌年からキャップやベースボールシャツなんかを作ってみたりして、徐々に徐々に増えていったっていう感じです。

―ちなみに<FAT>のブランド名の由来を教えていただけますでしょうか?

“クール”とか“かっこいい”っていう意味で使うスラング「PHAT」が語源。プラス、ビッグサイズの服も作ろうという意図があったので、文字を変えて<FAT>にしました。スラングの「PHAT」も「FAT」って書く時もあるんで。

―駒井さんがディレクターになったのはいつ頃ですか?

2018年のコレクションからです。もともと前任のディレクターと一緒に動いていて、店舗にも立ちながらプレスみたいなこともしていました。

―ブランド全体の流れを見ている立場だったんですね。昨今、東京のストリートカルチャーがまた世界的に脚光を集めていますが、その黎明期といえば90年代。<FAT>は00年代以降のブランドなので、またひとつジェネレーションが違うという印象です。

そうですね。確かに90年代ど真ん中の東京ストリートカルチャーとはちょっとノリは違うかもしれません。僕に変わってからは、特にそこは意識しています。

―それは具体的にはどういうことでしょうか?

いわゆるスケートカルチャーをパロディにして、それをTシャツにプリントして、っていうのがブランド発足当初のスタイルでした。あくまでコンセプトとしてスケートボードやそのほかのカルチャーを取り入れていた。今ももちろんそういうアプローチもありますが、今はもっとリアルを追求しています。例えばスケートボードのフォトグラファーとしっかりコラボレーションして作品を作るとか、スケーターに<FAT>の服を着てもらって遠慮なくスケートしてもらうとか。僕自身スケートボードをやっているので、、、もっと本質的な部分にフォーカスしたモノ作りとかビジュアル作りを意識しています。

―ブランドを展開する上で、具体的なコンセプトは設定しているんですか?

そうですね…ワードにしちゃうとちょっと格好つけた感じになってしまうんですが、普遍的でシンプルなんだけど必ずどこかにアイデンティティーを感じるもの、という感じです。それをどう具体的にデザインに落とし込むかは、感覚的なところになってしまいますね。例えばピスネームひとつつけるだけでもアイデンティティーが生まれるし、ベーシックなTシャツを13ozのヘビーオンスで作るだけでもアイデンティティーは生まれる、アウトプットは常に変化します。

―ディテールに関してはいかがでしょうか。アメリカの古着をインスピレーション源にしているとおっしゃっていましたが。

古着も研究して細部を再現したりと、その辺は結構こだわっていますね。

―スケート、古着、ヒップホップ、BMXなどなど、様々なストリートカルチャーからエッセンスを抜き出し、そこにオリジナリティを加えて構築していく。

ゼロからイチを生み出す作業って、今のファッションにおいては多分できないことだと僕は思っています。いろんなカルチャーからインスピレーションを得て、それをどうつなぎ合わせていくか。そこにどんな新しいストーリーを乗せて伝えるか。それが重要だと思っています。

―FAT独自の感性でいうと、どういったものがありますか?

ブランド発足当初から展開している13ozのTシャツももちろんひとつの個性だと思いますし、ここ2.3年ぐらい定評をいただいているパンツも象徴的なものだと思います。パンツは9部丈のいわゆるクロップドパンツなんですが、ワタリはかなりワイドで裾に向かって極端にテーパードするシルエットにしている。これも単なる表面的なデザイン性というわけではなく、スケートやBMXなどをするときに邪魔にならないっていうベースがある。なんとなく視覚的に変化をつけているだけじゃない。そういうことが大事だと思うんです。

―背景がしっかりあるからこそ、アイテムに説得力が増すわけですね。

ベーシックなTシャツやチノパンといったアイテムはもちろんデザイン性はこだわっていますが、僕としては、長く着て欲しいという気持ちも強い。だから飽きさせないように、いつも新鮮に着られるようにというのもすごく意識している部分です。
<FAT>はストリートブランドですが、決して若い子たちのためだけのブランドではないと思っています。実際、顧客様は10代から50代まで幅広い。〈Fat Classic〉というのが存在するのもそのためです。

―クラシックコレクションについて教えてください。

スタートしたのは2012年。ブランドの初期からファンでいてくれている方も年齢を重ねてきて、ある程度きちんとした印象でいられる服も必要になってきた。そんな要望に応えるために始まりました。もともとはスーツだけの展開でしたが、今はそのほかのアイテムも追加して、ひとつのコレクションとしてまとまっています。
アイコンアイテムであるセットアップは、ヴィンテージのセットアップがベース。ワークやミリタリー、トラディショナルなスーツがインスピレーションソースです。

―デザインや作りにおいてこだわりはありますか?

生地も国産で、縫製も国内。そこにはこだわりがあります。国内の信頼できる工場で生産することでクオリティコントロールもしっかりできるので。そこはやっぱり譲れないなって思っています。

―駒井さんは普段、どんなものからインスピレーションを得ているのでしょう?

基本的にはスケートカルチャーですね。若い頃からビジュアルに限らず、ムービーなんかも見漁っていました。加えてトラディショナルなファッション文化も勉強しましたよ。プレッピーやミリタリー、クラシックなブリティッシュスタイルなど、ファッション文化におけるオリジンの魅力も理解しているつもりです。それらをミックスしてクリエーションをする感覚です。

―ストリートブランドでありながらどこか地に足のついたクオリティ、品があるのはそのためなんですね。

それは気にしている部分ですね。トレンド一撃の洋服は必要に応じてやりますが、あまり作りたくない。僕自身があまり手を加えすぎたものが好きじゃないのもあるし、ユーザーからしても結局飽きちゃうと思うんです

―オーセンティックであること、でしょうか。

まさに。そこは追求し続けたい部分です。

―コレクションを構築する上で一番苦労する部分はどこですか?

作る上で、ストーリーは常日頃から意識していて、ブランドとして自然な流れでリアリティのあるものにしています。ただ、様々なインスピレーションをつなぎ合わせて、いかに新鮮に感じさせるか。やはりそれが一番難しいです。

―<FAT>では毎シーズン、雑誌にも似たBOOKを出しています。これについて教えてください。

これは『Sb Skateboard Journal』という雑誌との取り組みで毎シーズン刊行しているものです。毎シーズン1都市にフォーカスし、その都市のカルチャーや人にフォーカスして作るのがコンセプト。これまでLAやポートランド、パリなど、様々な都市で撮影を行ってきました。

シーズンごとに刊行されるFATのBOOK
日本では数少ない、本格的なスケートボード雑誌『Sb Skateboard Journal』。

この秋冬は、本当はロンドンで撮影をするはずだったのですが、新型コロナの影響もあり断念。東京で、スケートボードにフォーカスをあてた特集になっています。<FAT>の背景を踏襲しつつ、毎シーズン新しいことをやろうというのがテーマ。デザインもビジュアルもできるだけ毎シーズン鮮度の高いものを提供しようと思ってやっています。

―かなり見応えがあります。

おかげさまで、毎シーズンこれを楽しみにしてくれる人も多いです。

―今季はいつも以上に、“人”にフォーカスしているようにも感じます。ブランドを展開する上でコミュニティづくりというのも意識する部分だったりするのでしょうか?

意識するというより、自然にそうなるといった感じでしょうか。スケートボードというカルチャーを通して、様々な人と繋がることができる。そしてそこからまた新しいストーリーが生まれたりもする。それが醍醐味でもあります。

―FATのクリエーションを見ていると、単純にブランドとして服を売っているというより、文化を作っているという印象があります。

それは強く意識している部分ではあります。スケートボードに関しても『Sb Skateboard Journal』との長年の取り組みがあってこその特別なつながりだし、スケートボードだけじゃなく、古着だったりトラッドだったり、そういった様々な文化を取り込んで<FAT>は形成されていて、それが響く物作りをしているつもりです。それが、単なるブランドとしてだけではなく、カルチャーとしての<FAT>になればと思っています。

―<FAT>に限らず、ブランドの理想的なあり方かもしれませんね。

逆にいうと、そうでないと今後残っていけないとも思っています。さっきも言いましたが、トレンド一撃みたいな展開はするつもりはないですし、そういうところで戦っているつもりもない。長くきちんと着られる服を作っていきたいんです。

―今季のコレクションについて教えてください。

今季のテーマは『SOURCE』。“本質”がテーマです。トレンドを踏襲したり、凝ったデザインを生み出したりすることはもちろん大事ですが、最終的に残るものというものはシンプルなもの。そこに丈夫さや機能性といった付加価値が加わって人に選ばれる。それが本質だと思うんです。そういったイメージを持ちながら、一つ一つアイテムを作り出しています。

例えばこれはハイスペックなスキーウエアをモチーフにしつつ、それをさらにシンプルに洗練させて作ったものです。

これは伝統的なBDUジャケットをベースに、パリのアーティストの作品をプリント。このアーティストはお金がないから本屋の前に捨ててあった世界地図の上に、その土地にゆかりのある偉人の似顔絵を描き始めたのがきっかけだそう。そういうクリエーションもまたある意味では本質だと思いデザインに採用させてもらっています。
フラッグシップショップやオンラインではもちろん、10月31日からフィギュア静岡で始まるpop-up storeでも今季の新作を見ていただけますので、ぜひチェックして欲しいと思っています。

2020 Autumn & Winter Collection LOOK BOOK

FAT POPUP “P2P PROJECT”
FIGURE静岡店にて2日間限定で開催


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